気遣っている

「ここから少し進んだ場所に、草木が生い茂る小さな雑林がありますぜ」
「じゃ、そこへちょっと寄り道しましょうか。寄れば何かしら生えてるでしょ」
「山越えまで持てばそれでいいわ。図鑑貸すから、それっぽい物があったら片っ端から持ってきて頂戴」
『へいッ!』
 それは後遺症や後の生活の安全の保証を考文具批發慮した上での”持つ”なのだろうな?
 下山する頃には植物状態になっているとかないだろうな? いやだぞそんなの。山をなめてはいけない。山は怖い。山はおっかないんだ。
『姉さん、もってきました!』
「ご苦労。ええと……ほっとんどただの雑草ね」
「まあいっか。この調子でドンドン持ってきて」
『へいッ!』
「えーっと、じゃあまずはこいつらをすりつぶして……」
 そう言って大魔女様は、ほとんど雑草と判断した草類をすり鉢状の入れ物に某ラーメンよろしく、ましましと山盛りにつぎ込み、どう考えてもその辺で拾った木の棒でぐちゃぐちゃと雑に混ぜ込んでいる。
 何をしているのかは大体わかる。魔女の調合薬……と言う割には、あまりに毒々しいヘドロ状に変貌した雑草を見て、これを登山の前に飲まされるのか。
 はたまた血管に直接注ぎ込まれるのか。それとも逆窗口式冷氣機比較の口から入れるタイプのアレなのか。
 そして何より、それを飲む事でどんな効果が生まれるのか……一抹の不安が脳裏を過る。
「これは……ええと……まぁ、いいか!」
 ふとチラリと大魔女様の横を見ると、調合のレシピに使うのであろう草の図鑑らしき本が置かれている。そして開かれたページには、ハッキリと”ドクロ”のマークが描かれているのが見える。
 ……さっきそれに似た草が混ざっていと思うのだが、気のせいか。
 そして大魔女様はついに鼻歌を流し始められ、僕の安否を(と信じたい)薬の調合に精を出し始められた。
 山賊の手によって次々と運ばれる雑草をロクに見る事もなく、鷲掴みで次々とつぎ込んでいき、それはそれは楽しそうに次々とヘドロを生み出す大魔女様を見て「これは絶対になんらかの障害が残る」と確信めいた勘を抱きつつ、毒草よりもそれを中和するだけの薬草が多く配合される事を神に祈るのみである。
 それはトランプのババが回ってこない様に、パックの中にダブリカードが入っていない様に、レアガチャを引けるように。
「あ……」
 ここで一つ後悔が過った。願いは一つだけと言ったが全面的に撤回しよう。
 そう、願いはもう一つ残っていた。もし夜まで生き残る事ができたなら、もし文具批發またあの流れ星を見る事が出来たなら、今度は見逃さず、こう祈ろう。


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